――そこから格闘DREAMERSに応募したのは、どのような経緯があったのでしょうか。
「髙谷(裕之)さんが代表だったことが一番の理由です。髙谷さんがやっているところで自分もやってみたい、と思って。ただ、参加して他の選手と比べたら、組み技だったりMMAとしての差が大きかったですね。自分の弱さに対して、本当に悔しかったです。
ちょっとキックボクシングができるだけっていう感じで、当時はMMAをやっていたんです。正直、MMAで何をどうすればいいのかも分かっていませんでした。格闘DREAMERSでは、ただただ練習についていくだけで」
――その時、ボクシングやキックボクシングに戻ろうとは思いませんでしたか。
「その選択肢は全くなかったです。格闘DREAMERSオーディションを受けた時に、もうMMAをやっていくと決めていましたから」
――しかし、最終戦でも敗れて契約を勝ち取ることはできませんでした。
「契約を勝ち取れなくて、落ち込むことはなかったです。オレってまだまだだな、もっと頑張ろうと。もちろんオーディションを受けていたから、契約を勝ち取りたい気持ちが一番でした。でもゴールは契約じゃなくて、もっと先のことじゃないですか。だからオーディションを経て成長できればいいな、という気持ちも強かったので」
――その後、齋藤選手は修斗でプロデビューしましたが、先に修斗で活躍している中村倫也選手や宇佐美正パトリック選手の活躍を、どう見ていますか。
「悔しいですよ。認めたくないけど、彼らは強い。だから自分も頑張らないといけないって、すごく刺激になります。僕はプロデビュー戦(2021年6月、片山将宏戦)で、ようやく気付いたことがあるんです。自分のスタイルについて」
――自分のスタイル、とは?
「格闘DREMARSの時のようにデビュー戦も下になって、上からコントロールされて負けました。自分が何かをすることもなく。これじゃ面白くない、だったら殴り合ったほうがいいと思ったんです。ずっと髙谷さんからも『(組むのは)お前のスタイルじゃないよ』と言われていて。それがどういうことか、ようやくデビュー戦で分かったんですよ」
――なるほど。もしかして齋藤選手はどこかで、MMAだから組まないといけない、寝技でも勝たないといけないという観念に駆られていたのでしょうか。
「そういうことなんです。今考えると、なぜそう思っていたのか分からないんですけど(苦笑)。だって、組んでもパウンドを打っていいのがMMAじゃないですか。なのに組んで寝技に行くことが主体になっていました。それに気づけたことが、2戦目の勝利につながったんだと思います」
――デビュー戦は昨年10月、谷井翔太選手に判定勝ちを収めています。
「殴って蹴って――自分のスタイルを徹底しました。練習中から、やっぱりこの戦い方だわって、しっくり来ていたんです。何でもそうだと思うんですけど、やっぱり自分でやってみて、失敗して気づく。その繰り返しですよね」
――そんな齋藤選手の試合ぶりを見て、髙谷さんは何か仰っていましたか。
「髙谷さんは普段、褒めたりしないので、『まぁ良かったな』みたいな感じでした(笑)。髙谷さんって現役時代は、テイクダウンディフェンスをしてスタンドで戦うか、あるいはテイクダウンしてパウンドっていうスタイルだったじゃないですか。僕も自分のスタイルを考えて初めて、髙谷さんのアドバイスがスッと入ってくるようになりました」
――そのプロMMA初勝利を経て、次のLyo’o戦を迎えます。
「四つで組んできて、どちらかというと漬けてくるタイプですよね。僕は全く逆だから、そんなスタイルの勝負になってくるかなって思います」
――組んでくるLyo’o選手に対して、組みだけで勝負しようという気持ちは……。
「アハハハ、もう全くないです。たとえ相手が組みの選手でなくても、自分のスタイルを貫き通します」
――最後に、今MMAをやっていくうえでの目標を教えてください。
「まだ次が3戦目の僕が言うのもおかしいですけど、チャンピオンになりたいです。今はオファーを頂ければバンバン試合をして、一つひとつ勝っていきたいです。そうすれば、いずれチャンピオンに近づいていくことができると思うので。あと……ひとつ聞いていいですか」
――はい、何でもどうぞ。
「まだデビュー3戦目の自分が今回取材してもらえたのは、不思議で仕方ないんです。やっぱり格闘DREMARSに出ていたからなんですか」
――いえ、格闘DREMARS出身という点だけが、取材の理由ではない。ただし格闘DREAMERSがあって、将来性のある選手だと知ることができたのも時事実です。
「すみません! 失礼なこと聞いちゃって。でも分かるんです。格闘DREMARSに参加したおかげで、デビュー戦なのに声をかけてもらったり、取材してもらえているので。すごくありがたいです。でも、そのままじゃいけないと思うんで。これからは格闘DREMARS出身だからというより、齋藤奨司だから取材してもらえる。そんな選手になれるように頑張りますので、よろしくお願いします!」