11月6日(土)、東京都江東区のスタジオコーストで開催される『PROFESSIONAL SHOOTO 2021 Vol.7』で、猿丸ジュンジが黒澤亮平との世界ストロー級暫定チャンピオン決定戦に臨む。
2007年にプロデビューした猿丸は、文字通り修斗一筋で戦ってきたファイターだ。そのなかでベルトに挑むこと4度――しかし、その腰にベルトを巻くには至っていない。
対する黒澤は、猿丸が目指す修斗のベルトを獲得したことのあるファイターだ。
両者は2015年に対戦し、その時は猿丸がKOで勝利している。だが、その試合の1年後に王者となっていたのは黒澤だった。
複雑な因縁が絡み合う今回のチャンピオンシップ――猿丸に5度目の王座挑戦への意気込みを訊いた。
――昨年9月19日に飯野建夫選手とのランカー対決をKOで制してから1年2カ月、5度目の王座挑戦を迎えます。まずはこの世界戦が決定した感想から教えていただけますか。
「良かったです。ずっと待っていたので。前の試合でKO勝ちして、すぐチャンピオンシップをやれるのかな、と思っていましたけど……」
――ストロー級の正規王者、箕輪ひろば選手がONEChampionshipと契約したこともあるのか、なかなかチャンピオンシップの機会が訪れませんでした。この期間、チャンピオンシップ以外の試合を挟もうとは考えていなかったのですか。
「すぐに挑戦できると思っていたので、試合を挟まないようにしていました。チャンピオンシップが1年後になると分かっていたら、試合は挟んでいましたね(笑)。でも今回は、結果的にそうなっただけなので。前の試合から1年以上空いたことは、全然問題ないです。待っていて良かったですよ。他の大会に出ることもなく」
――他の大会……そうですよね。これまで猿丸選手は4度、修斗のベルトに挑み敗れました。そうした場合、他のプロモーションに戦いの場を移す選手も少なくはありません。
「4度……アハハハ、いっぱい負けちゃいましたね(笑)」
――そこで笑い飛ばしますか(笑)。
「まぁ、他の大会っていうのは考えていなかったです。今の時代、他の選手からも良い話は聞くじゃないですか。でも、それは関係なくて。修斗で待っていて良かったですよ」
――そこで修斗のチャンピオンシップを待ち続けたのは……。
「修斗でチャンピオンになりたい――いや、修斗のチャンピオンになる。そう決めたからです。だから他に行くことは考えていなかった。たとえ他から良い話をもらっても、そこはお金じゃないんで」
――猿丸選手はプロデビューからずっと、修斗で戦い続けてきました。修斗のベルトへのこだわりも強かったと思います。その気持ちが薄らぐことはなかったのですね。
「薄らぐことはないです。プロデビューからずっと修斗でやっている、いろいろ言われることもありますよ。でも、そんな選手がいてもいいんじゃないか、と思っていますけどね(笑)」
――では試合前の昔の話で恐縮ですが、過去4度の王座挑戦失敗は、何が原因だったと思いますか。
「コンディショニング面とか、いろいろあるけど……それも含めて、自分の実力不足です(苦笑)。でも今が一番、完成度が高いところまで来ました」
――確かに、ここ最近の猿丸選手は以前の打撃中心のファイトと異なり、テイクダウンと打撃が組み合わさったMMAを展開しています。猿丸選手の中で、何か大きく変化したところはあるのですか。
「特にメチャクチャ変えたというのは、そこまでないんですよ。減量のやり方ぐらいかな。劇的に練習方法が変わったとかも、ないです。ちょっとずつ変えてきました。落とす試合があったのは、それが完成していなかったから。でも、それが今、完成してきているということです。ちょっと遅いけど(笑)」
――猿丸選手はプロデビューが2007年で、最初の王座挑戦が2011年4月の生駒純司戦……もう10年前になりますね。
「生駒さんと試合した頃は、勢いだけでしたね(笑)。そのあと打撃が強くなって、今はテイクダウンや極めも強くなって、それを合わせられるようになってきました。ようやく今、自分の修斗が完成したというか」
――それこそ猿丸選手がこだわってきた修斗であり、打投極の回転ということですよね。
「はい。だから今の自分が、一番なんです」
――練習やスタイルを少しずつ変えてきたということですが、いつ頃から手応えを感じていましたか。
「本田良介戦ですかね(2018年11月、猿丸がテクニカル判定勝ち)。何か急にカチッとハマったわけではないんですけど、自分の中では完成形に近づいてきたな、と感じました」
――もう1点、減量方法は大きく変わったのですか?
「以前は長い期間かけて体重を落としていたんですけど、最近は一気に落とすようにしました。長い期間かけていると体も細くなっちゃうし、試合では練習どおりのパワーも出なくて。練習ですごく強くても、その強さを試合で出せないと意味がないじゃないですか。そういう気持ちは、ずっと持っていたんですよね」
――練習ではできていることが試合では出せない、と。
「そうなんです。だから筋肉が残るように体重は一気に落とし、リカバリーするようにして、体が大きいまま試合に挑めるようにしました。おかげで、ここ4戦ぐらいは試合の時の体が大きいんです」
――そう言われてみれば確かに……。ここ4戦というと、ちょうど猿丸選手の中で打投極の回転が合ってきたのと同じ時期ですね。
「ちょうど同じ頃ですね。そこから全てが合致したと思います。練習どおりの体と動きが、試合でもイメージとリンクして戦えるようになりました。練習どおりの力を出し切れました、それで負けました――であれば、もう諦めていたかもしれないです。でも、そうじゃなかった。まだ自分にはやっていないことがあり、それをやらないうちは諦めきれなくて」
――諦めずに続けてきた結果、今回のチャンピオンシップに至るわけですね。
「今回の世界戦は、絶対に自分の力を出し切ることができる。その自信があります」
――では、その対戦相手である黒澤亮平選手の印象を教えてください。
「打撃のスピード、ハンドスピードは今の修斗でもトップですよね。自分よりもハンドスピードもパンチ力もあるし。元チャンピオンですしね」
――黒澤選手は2016年7月に澤田龍人選手を下し、修斗のベルトを巻いています。その元チャンピオンという部分には引っかかりますか。
「すごく引っかかりますね。羨ましいとかじゃなくて、チャンピオンになっているから絶対に強いんですよ」
――猿丸選手は黒澤選手がベルトを巻く前、2015年5月に対戦してKO勝ちを収めています。
「あの時とは全然違いますよね。向こうは今、メチャクチャ強くなっているでしょう。それは、こっちも同じですけど。彼のストロングポイントは、当時から打撃で。テクニカルっていうよりは、パンチ力やハンドスピード……そこですよね。今はそこが、すごく研ぎ澄まされている。逆に、こっちは全部上がって、それがハマるようになってきました」
――両者のスタイルから、打撃戦を期待しているファンも多いかと思います。
「そうでしょうね。今回も試合の半分以上は、そうなると思いますよ(笑)。でも今の自分の場合は、ただの打撃じゃないから。いろんなものが合わさっての打撃なので」
――ちなみに今回が5度目の王座挑戦となるわけですが、猿丸選手の周囲はどのような反応をしているのでしょうか。
「自分の場合は、勝つ試合はアグレッシブな試合が多いじゃないですか。それで負けるたびに、応援の声が増えるというか。負けると逆に、みんなが応援してくれるようになるんですよ(笑)」
――えっ、それは稀有なケースですね。
「関係者の人や、対戦したことある選手からも『いつチャンピオンになるんだよ。早くベルト巻けよ』と言ってくれるんです。修斗の会場に毎回来ている、僕ではなく修斗のファンっていう人たちからも、同じような声をかけてくれますね」
――それこそが、修斗一筋でこだわってきた証かもしれませんね。
「はい。そんな声のおかげで、ここまで選手をやることができています。自分一人で続けてきたわけじゃない。そうやって応援してくれる人たちのために、熱い試合をして、修斗のベルトを巻きます」