
――2020年5月に倉本一真選手をKOし、暫定世界王座を獲得。そして今年2月、正規王者に昇格しました。
「僕の中で、暫定から正規王者になったことは、ものすごく大きなことでした。正規チャンピオンになることに、ずっとこだわっていたので。人生で一番嬉しかったです」
――そして今回、初防衛戦として大塚隆史選手との試合を迎えます。ただ、コロナ禍の影響もあり、昨年5月から10カ月のブランクがあります。
「そうですね。もちろん試合はしたかったです。でも、試合ができないならできないで、その期間にやれたことがありました。倉本戦の前に、アメリカン・トップチームへ練習に行っていたんですよ」
――昨年2月から約1カ月間、米国フロリダのATTへ行っていたのですね。
「はい。その間に教わった情報量が多すぎて、自分の中で消化しきれていなかったんですけど、この試合のない期間に、ようやくATTで学んだことの復習が終わりました。試合のための減量などもなく、ただただ練習に時間を費やすことができて、その部分では試合がなかったこともプラスに捉えています」
――ということは、倉本戦ではまだATTで学んだことを全て出しきってはいない、と。
「倉本戦で出せたのは、2割ぐらいですね。まだ8割、見せていない部分があります。そこを試合のない期間に詰めることができたので、次の大塚戦でお見せしますよ」
――ATTで学んだことのなかで、一番大きかったと感じるのは?
「なるほどと思ったのは、『想いの強弱とサイコロの出る目は関係ない』と言われたことです」
――想いとサイコロの目……どういう意味でしょう?
「たとえば日本人って、『死んでも勝つ』みたいな精神性を重視するところがあるじゃないですか。僕も以前は、そういう気持ちで試合に臨んでいたんです。でもATTでの練習を通じて、試合への決意は技術があってこそ生きる、と感じたんです」
――なるほど。
「そうした気持ち云々よりも、まずは技術をたくさん身につけるという考え方で、みんな練習しているように感じました。試合に向けて気持ちを作りこむことは大切です。でも、それ以上に技術を磨こうという意識に変わりました」
――これまでは、もちろん技術を身につけてきたとは思いますが、それよりも精神的な部分を重視してきたのでしょうか。
「はい。“死ぬ気でやれば何とかなる”というような精神でした。気持ちで負けなければ大丈夫だって。でも今は、そんな根性論的なものは一切排除しています」
――ただ、これまで試合の中で、その精神性が良い方向に働いていたのではないかとも思います。それだけ岡田選手は、気持ちが見える試合が続いていたので。しかし、技術と精神で、その優先順位が変わってしまうと、自身の良さが消えてしまう可能性はないですか?
「そこに関しては、ないですね。逆にMMAとしての質を高めることができました。試合前に『死んでも勝つんだ』と思いつめなくても、今は勝つ自信がある。余裕があるというのか……試合前に思いつめてパニックになり、私生活にも影響を及ぼしてしまうようなことは、なくなりました」
――ずっとそこまで思いつめていたのですね。
「以前は『もしかしたら次の試合で死ぬかもしれない』とか思いつめて、精神的に疲弊することもあったんです。でも今は自信がついて、精神的な余裕もある。その余裕が、よい形で試合に影響すればいいなと思っています」
――それだけ精神的に疲弊していたのは、いつ頃のお話ですか?
「石橋戦(2016年11月、石橋佳大戦。一本負け)の頃は、『負けたら死ぬ』と思っていました。倉本戦も、そういう気持ちはありましたね。初めての世界チャンピオンシップだったので。でも、ベルトを獲得できたことも、精神面に大きな影響を与えているかもしれません。僕にとっては、それだけ大きなことでしたから」
――では、次の大塚戦についてお聞きします。最初に大塚選手が修斗に出場すると聞いて、どう感じましたか?
「正直なところ、僕が大塚選手と試合するとは思っていなかったです。大塚選手はスポットで出場するだけで、継続参戦はしないだろうな、と。また、初戦で安藤達也が負けるとも思っていなかったので」
――大塚選手の修斗初戦、安藤達也戦の予想は、安藤選手が勝つと思っていた?
「あの時点の両者を比較して、僕の中では安藤君が勝つのかなと思っていました。だから、自分が大塚選手と交わることないと考えていたんですよ」
――しかし結果は、大塚選手が1R TKOで安藤選手を下しました。
「それで、もしかしたら大塚選手と対戦する可能性があるなと思いました」
――大塚選手が安藤戦後、ケージの中で岡田選手の名前を挙げ、当日はTV解説席にいた岡田選手も受けて立つような発言をしています。それを聞いて、そのままケージに上がるんじゃないか、とも思ったのですが……。
「ハハハ(笑)。あの時はまだ僕が暫定チャンピオンで、暫定王者は180日以内に正規チャンピオンと統一戦をやらなければいけない、というルールがあったじゃないですか。だから僕は、次の試合は正規王者・佐藤将光選手との統一戦だと思っていたんです。そこで大塚選手が僕の名前を挙げても、『今はできないよなぁ』という感じで」
――それが一転、大塚選手との対戦が決まりました。大塚選手が修斗に参戦して2試合目で、世界戦に挑むことについては?
「ずっと修斗でやってきた僕から見て、2戦目というのは早いと思いますよ。もし僕がランカーの立場だったら、ハラワタ煮えくり返ります。でも、現状を見渡しても、そんなことを言っているランカーはいない。じゃあ僕が防衛戦を行うにあたって、誰と防衛戦をするのが一番盛り上がるのかなって考えたときに、それは大塚選手と判断しました」
――それが岡田選手にとっての修斗愛でもあるわけですね。
「はい。僕はアマチュア修斗からやってきて、ずっと修斗でキャリアを積んできた。その自負があります。ヨソの畑で育ってきた大塚選手には、修斗のために負けられない。その責任感はあります」
――これまでのキャリアの中で、大塚選手は最大のビッグネームといえます。
「僕がプロデビューする前から、大塚選手は日本MMAのトップ戦線で戦っていました。テレビで試合を見ていた選手です。パラエストラ千葉の先輩で北田俊亮さんという方がいて、北田さんは大塚選手と何回か試合をしながら、いつも大塚選手を越えることができなかった姿を間近で見ていました(大塚は北田に2勝1敗と勝ち越している)。すごくお世話になった先輩が越えられなかった相手と自分が対戦するのか、って今は驚いています」
――その大塚選手の印象は?
「以前見ていたころと比べて、試合でやることは大きく変わっていない気がします。ずっと同じことをやり続けている。逆に、それが大塚選手の強さだとも思いますけど」
――ずっと同じことをやり続けている場合、3つのパターンが考えられます。実力は常に一定なのか、その精度は上がっているのか。あるいは下がっているのか。
「精度は落ちてきているような印象を受けています。安藤戦の前の元谷友貴戦(2020年3月、判定負け)、ビクター・ヘンリー戦(2018年8月、KO負け)、RIZINでの石渡伸太郎戦(2017年12月、判定負け)を見ていると……」
――その印象は、安藤戦を見ても同じですか?
「安藤戦は、早い段階でアクシデント的に終わってしまいましたけど、それまで大塚選手の動きはあまりよくなかったように思いますね。次の試合は、僕が差を見せつけて勝ちます」
――今、自分が大塚選手より勝っていると思うのは、どんなところでしょう?
「打撃、対応力、そして極めですね」
――全部じゃないですか。
「ハハハ。テイクダウン力は大塚選手のほうが上かもしれないけど、テイクダウンの後の展開は、僕が勝っていると思います」
――大塚選手も、今回の試合に向けてモチベーションが高いようです。両者の対決に、期待感は高まっています。
「僕もコンディションはバッチリです。試合に向けたファイトキャンプも、怪我なく終えることができました」
――では最後に、大塚戦に向けた意気込みをお願いします。
「ここ数年、僕は修斗のメインイベンターとして、責任感を持って戦ってきました。今回は、大塚選手が相手なら、間違いなくハイレベルなMMAを見せることができると思います。今回も修斗のメインをしっかり締めて、大会を盛り上げます。ぜひ見てください!」