
11月6日(土)に東京都江東区のスタジオコーストで開催される『VTJ2021』で、修斗世界フライ級王者の平良達郎が、チリのアルフレド・ムアイアドと対戦する。
今年7月に敵地・大阪で福田龍彌を下し、修斗のベルトを腰に巻いた平良達郎。王者となってから迎える初戦は、VTJでの国際戦となった。
相手のムアイアドはMMA戦績6勝2敗で、チリのMMAイベントPOMAのベルトを獲得している。
一方で、国内のフライ級も盛り上がりを見せるなか、平良はこの試合に何を思うのか。国際戦に向けた決意を訊いた。
――初めての出場となるVTJで、チリのアルフレド・ムハイアドと対戦することとなりました。まず現在の心境はいかがですか。
「オファーを頂いた時に、初めて修斗公式戦以外で試合をするので、緊張するかなと思っていました。でも今はワクワクしています。今まで海外の選手との対戦経験が、ほとんどないですからね」
――平良選手にとっては、2020年1月にジャレッド・ライアン・アルマザンをTKOで下して以来の国際戦となります。
「もともと自分はあまり関係ないと思っているんですが、今回の試合はフィジカルの違いとか感じるのかな、とかワクワクしています。その意味でも、試合を楽しみたいという気持ちが一番大きいです」
――あまり関係ない、というのは?
「フィジカルについては、日本人選手と海外の選手で、そんなに変わらないかなと思っています。もちろん個人差はあるでしょうけど、体重を揃える階級制の競技ですから」
――……それは、平良選手が国内のフライ級で、圧倒的な体格的アドバンテージを持っていることもあるかもしれません。
「そうですかね……大きく見えるのは、昔よりリカバリーが上手くなったからかもしれないです。もともと減量してから試合までに体重をバッと戻すほうではなかったので」
――それだけリカバリーの幅が変わってきているのですか。
「今は試合当日に6キロぐらい戻りますけど、昔は3キロぐらいでした。最近は水抜きが増えてきたので、そのぶん戻る幅が大きくなっているんだと思います」
――リカバリーの幅が大きくなっていることは、試合に影響を及ぼしたりはしないのでしょうか。
「影響はないですね。練習でも最後の1週間は、試合当日の体重で動くようにしています。だからリカバリーの幅が大きくなっても、試合中は動きやすくて、コンディションも良いと感じながら戦うことができています」
――今年7月に修斗世界フライ級チャンピオンシップで戦った福田龍彌選手は、平良選手と組んだ時の感想として「フレームが違った。フェザー級の選手ぐらいに感じた」と述べていました。平良選手としては、組んだ際に相手との差を感じることはありますか?
「組んだ時に差を感じるというか、これは投げられるか投げられないか――テイクダウンに行けそうだなと感じることはあります」
――投げられるか投げられないか……そこで「投げられない」と感じたことはあるのでしょうか。
「それは……なかったですね」
――これまでの試合を見ても、結果的に組み負けたことはないでしょうね。
「試合で組むと、いつもどおりだなって感じます。練習通りだって感じながら試合をしていますね」
――次の相手は海外選手です。現在、国内で外国人選手と練習することはありますか。
「ライトかウェルター級になりますけど、ジョナタンっていうプロ選手がジムにいます」
――ジョナタン・バイエス選手ですか。12月5日に修斗で佐々木信治選手と対戦しますね。
「はい、そのジョナサンです。身長が190センチぐらいあって、体も強いんですけど、倒すことはできます。僕も本格的に海外で練習したことがないし、外国人選手と組むことに慣れているわけではないですが、修斗でもそうですし、柔術の試合や練習では組んだことがあるので」
――平良選手が修斗のベルトを獲得したあと、海外選手との試合が見たいという声は多かったと思います。しかしコロナ禍もあって、海外から選手を呼ぶのは難しい状況にありました。そんななかで、ベルト獲得後はどのようなプランを持っていたのでしょうか。
「海外選手との試合経験は必要だな、っていうことは会長と話をしていました。それで修斗のベルトを獲ってからは、UFCのコンテンダーズ・シリーズに出られるかどうか、という話もあって。結局は出られなかったんですけど……。それでまた来年に出て、UFCとの契約を目指そうという感じです」
――なるほど。
「だから今年はしっかりと勝っていくこと。勝ち続ければ絶対に、UFCに出場できると思うので、目の前の試合を勝ち続けていきます」
――海外から選手を呼ぶのも難しい、一方で海外で戦う機会も……となれば、やはりベルトの防衛戦を行うことを考えていましたか。
「もちろん防衛戦はしたいですし、海外の選手とも戦いたいし、あるいは他団体のチャンピオンと対戦するのも面白いかな、とか考えていて……。いろんなことを考えすぎて、何が正解か分からなくなりました(苦笑)。だから、まずは目の前の試合を勝っていこうという考えになりました」
――すると、他団体のチャンピオンの試合も見ているのですか。
「はい、見ています」
――では10月23日に行われた、DEEPフライ級正規王者の神龍誠×福田龍彌戦について感想を聞かせてください。あの試合は、平良選手が福田選手に勝った直後の試合とあって、平良選手と神龍選手を比較する見方もあったかと思います。
「神龍選手が判定で勝つかな、と思っていました。でも福田選手が強いことも分かっているし、実際に途中までは福田選手が勝つんじゃないかという展開になっていましたけど、最終ラウンドに神龍選手がパンチでダウンを奪ったのは、すごいなと思いました。あそこで試合をひっくり返すことができるのは、すごいですよね」
――その神龍選手に対して、自分が戦ったらどうなるかという視点はありましたか。
「はい、その視点はありました。自分が戦ったら――まあまあ余裕かな、と感じです」
――――キッパリ言い切りますね。では、同じDEEPフライ級の暫定王者、藤田大和選手に対しては?
「藤田選手は強いと思います。ただ、藤田選手はスタミナ面で、まだ穴があるのかなって思いました」
――一方で、神龍選手に平良選手の印象を聞いたところ、「分からない」という回答でした。「まだ修斗で競った試合を見たことがないので」というのが理由です。
「……確かに今までの試合で、ピンチだと感じたことはないです。そこは自分の良いところでもあり、経験値として足りないところだなって思います。今までは早期の決着も多かったので、ヘトヘトになった時の自分の動きや、ピンチになった時に盛り返す力とか――そういうのは本番の試合でしか体感できない。そこは正直、自分でも不安なところはあります」
――次の対戦相手、アルフレド・ムハイアドはその不安な面を確認できる相手となりうるでしょうか。ファイターとしての印象を教えてください。
「試合映像を見るかぎりでは、パンチは強いですよね。寝技は粗いのかなと思いますけど。相手の得意な部分で自分がどう通用するのか、いろいろと感じたいです」
――これまでムハイアドのようにパンチで攻めてくる相手はいなかったと思います。
「そうですね、あれだけパンチを振ってくる選手はいなかったです。せっかく海外から選手を呼んでいただいているので、いろんなことを感じてみたいですよね。組んでみてフィジカルがどうなのか、相手のパンチを受けたら重いのか、あるいはパンチが見えるのか。どちらにしても、自分も修斗のチャンピオンですし、これぐらいの差があるぞっていう内容を見せて勝ちたいですね」
――見せたいというのは、誰に対して?
「ダナ・ホワイトです」
――おぉっ!!
「誰が見ても分かる、それぐらい圧倒的な試合にしたいです。この前のコンテンダーズ・シリーズは、中国人選手がたくさん出ていましたよね。あれだけ中国から出られて、日本人選手が出られないのは、甘く見られている気がします。そうしたものを全部見返したいです」