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【review】2度目のONEアメリカ大会に新時代のムエタイを見た!

9月6日(金・現地時間)にアメリカはコロラド州デンバーのボールアリーナにて開催されたONE 168「Denver」。ONEにとっては昨年5月以来、2度目のアメリカ大会だったが、大会前の公式計量とハイドレーションテストを失敗する選手が続出する。

特にONEサブミッショングラップリング世界フライ級王者のマイキー・ムスメシは、当初3階級上=ライト級王者のケイド・ルオトロとの対戦を予定していたが、ルオトロが大会直前に欠場。急遽、ムスメシが保持するフライ級のベルトを賭けてベベット・オリヴェイラとのタイトルマッチに変更されるも短期間でのフライ級までの減量に失敗し、(ハイドレーションテストをクリアできず)王座剥奪と試合消滅いう事態が発生していた。

そんなトラブル続きのONE 168だったが、大会全体を通してみると、ONEにおけるムエタイルールの魅力が爆発した大会となった。

全9試合中5試合がムエタイルールで行われた今大会では、オープニングマッチ=第1試合でショーン・クリマコとジョハン・エストゥピニャンがいきなりダウンの応酬を展開。合計6度のダウンが飛び交う乱打戦の末にエストゥピニャンが2RでKO勝利を収める。

第2試合ではジョハン・ガザリがホスエ・クルスを1R終了間際の左フックでKO。MMAを3試合挟んでの第6試合では元ONE MMA世界バンタム級王者のジョン・リネカーがムエタイルールにチャレンジし、エイサー・テン・パウを右フックでマットに沈めた。

そしてムスメシのタイトル戦消滅により、メインイベント(第9試合)とコーメイン(第8試合)でムエタイルールの試合が並ぶ形となったが、その2試合がよりムエタイの激しさが伝わる試合となる。

第8試合はONE屈指の激闘派として知られるセクサン・オー・クワンムアンと世界的なムエタイの古豪リアム・ハリソンが一騎打ち。セクサンとハリソンはパンチだけでなくヒジ打ちも織り交ぜたムエタイらしい打ち合いの末にセクサンがパンチで3度のダウンを奪ってハリソンから勝利を収めた。

そして今大会のメインイベントとなったONEムエタイ・バンタム級タイトルマッチ=王者ジョナサン・ハガティーとスーパーレック・キアトモー9の一戦は、衝撃的な結末を迎える。

試合開始からわずか49秒、軽快なステップからワンツーで飛び込んだハガティーにスーパーレックが右のヒジ打ちをカウンターで合わせると、この一発でハガティーがダウン。この一撃でハガティーは試合続行不可能となり、スーパーレックが誰も予想していなかった秒殺KO、ムエタイのヒジの恐ろしさが伝わる一撃でハガティーとの世界最高峰の一戦に終止符を打った。

ONE Friday FightsをはじめONEのリングで繰り広げられるムエタイは、ミドルキックと首相撲主体でクロスゲームの末に判定で決着をつける従来のムエタイとは違い、1Rからお互いにKOを目指して戦うアグレッシブな試合になることが多い。これはONEがギャンブルとしてのムエタイではなく、スポーツとしてムエタイを普及させるべく、OFGの採用やルールそのものを整備したことが大きい。スーパーレックらタイのトップ選手たちもこれを歓迎している。

「賭けがあると、戦いながら賭け率を気にしなければいけないし、賭けが成立するような試合をしなければいけない。でも賭けがなければ、余計なことを考えずに勝つことだけに集中できる。そして自分のベストスキルを出して、自分の実力を証明することができる」(スーパーレック)

「ムエタイに賭けがあることで本来勝者であるべき人間が負けることがあった。観客にとってムエタイ選手は賭けの対象でしかなく、賭けに勝てるかどうかで応援されるかされないかが決まっていた。でもONEのおかげでムエタイがスポーツとして、ムエタイ選手がアスリートとして扱われるようになり、観客も賭けとは関係なく、心から好きな選手や応援したい選手に声援を送るようになった」(ロッタン・ジットムアンノン)

「ここ数年でムエタイがギャンブルからスポーツに変わり、間違いなくタイの若い人たちはムエタイに興味を持つようになった。ムエタイがスポーツになることは非常にポジティブなことだし、選手のキャリアそのものもポジティブにしてくれる」(タワンチャイ・PK・センチャイ )

「ムエタイからギャンブルという要素がなくなり、本当のムエタイを見てもらえるという意味で、観客にとって凄くいいことだと思う。また選手にとっても判定基準にギャンブルが影響しないからこそ、もっと純粋に自分のスキルを使って戦うことが出来る。ようやくムエタイの本来あるべき姿をみなさんに知ってもらえるようになった」(スーパーボン・シンハ・マウィン)

ONEのムエタイはムエタイではなく、ONEムエタイだという意見もあるが、そのONEムエタイが選手のスキルやポテンシャルを引き出し、より多くの層に届くコンテンツになっていることも事実だ。ONE2度目のアメリカ大会は変わりつつあるムエタイを世界にアピールする大会だったと言えるだろう。

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