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【review】UFC ESPN60。韓国勢は1勝2敗。効かせても、反撃を食らう現実。

7月20日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXでUFC on ESPN60「Lemos vs Jandiroba」が開催され、チェ・スンウ、チェ・ドゥホ、イ・ジョンヨンという3人のファイターが戦った。本来はパク・ジュンヨンがコメインで出場予定だったが、減量で体調不良に陥り欠場となり、プレリミで戦うはずだったイ・ジョンヨンの試合が昇格となり、3選手揃ってメインカード出場というコリアン・ナイトとなった。

ただし、結果的には1勝2敗とK-MMAの存在感を示せるようなハッピーエンドにはならなかった。ハイダー・アミルと対戦したイ・ジョンヨンは開始直後に右フックのカウンターで明確なダメージを与えながらも、盛り返してきたアミルのフックの猛威にさられ、65秒でスタンディングTKO負けを喫した。

チェ・ドゥホこそビル・アレジオを相手に2R中盤に左フックを目に打ち込み、TKO勝ちを収めたものの、チェ・スンウはスティーブ・ガルシアにカーフを効かせたが左ストレートを打たれると打ち合いに転じ、連続で左を打ち込まれ最後は亀の状態でパウンドアウトとなった。

イ・ジョンヨンは11勝(※今回の敗戦で2敗目を喫した)のうち4試合がKO勝ちで、3試合が一本勝ちというフィニッシャーだ。プレビューで書き記したように抜群のカウンターを当てるセンスの持ち主で、踏み込んでも誘い込んでも相手をキャンバスに沈めることができる。実際にアミルにも左フックを効かせることができていた。

チェ・スンフはこれでオクタゴン戦績が4勝6敗となり、黒星先行という状況を五分に戻せなかった。キャリアを通すとレコードは11勝7敗──。UFCで戦う以前は、7勝1敗で5つのKO勝ちを誇っていた。

イ・ジョンヨンはRoad FC育ち、チェ・スンフはTOP FCで経験を積み、前者はRoad to UFC経由、後者は直接UFCとの契約を果たしている。いわば韓国国内のセリーグ(Road FC)と、パリーグ(TOP FC)でホームラン王となり(実際、両者揃って同プロモーションのフェザー級チャンピオンだった)、メジャーリーガーとなったわけだ。

Road to UFCでも2つのマッシブKO勝利でインパクトを残しているイ・ジョンヨン。そんな彼らが、自分のペースで戦いダメージを与えても怯まない相手にTKO負けとなった。全員が全員そうであるとはいえないが、やはり韓国やアジアで戦ってきた相手とは違い、選ばれしファイターが最強を目指す戦場に立つファイターは心身ともにタフだ。

効かせたと思っても、反撃に出られる。韓国国内では真っ向勝負で勝つことができたので、果敢に足を止めて打ち合うことを彼らは選択する。だからこそ、韓国の選手はUFC内での評価が日本勢より高いのも事実だが、このスタイルで生き残ることができたのはコリアンゾンビことジョン・チャンソン、そして今回のチェ・ドゥホぐらいだ。

ジョン・チャンソンは打ち合い上等だが、WEC時代にツイスターを極めていることでも分かるようにグラップリングでもワールドクラスのファイターを相手に勝負ができていた。一方でチェ・ドゥホに関しては、まだ分からない。今回は相手が組んできたこともあって、グラップリングに付き合い、逆に消耗させて勝利を手に出来た。今後は、より打撃色の強いファイターと相対した時はどうなるのか見極めないといけないだろう。

何よりコリアンゾンビもコリアン・スーパーボーイも打ち合って名勝負を繰り返すことで、ダメージを蓄積させたという現実もある。効かせても、心も体も折れない。さらに戦意が増す相手に、流れを変える意味でも組みの展開は欠かせなくなってくる。そうなるとキック上がりのチェ・スンウより、マチャド柔術系の道場に長らく在籍し寝技を修得しているイ・ジョンヨンの方が、UFCで生き残る確率も高くなるという予想も成り立つ。

今のMMAは打撃で圧を与え、拳が届く距離で戦えることは試合の機会を得るという部分でも、欠かせない要素だ。距離をコントロールしてテイクダウンからドミネイトをしてもプロモーターには評価されず、ファンの支持を得ることもできない。

なによりテイクダウンからコントロールをしようにも、接近戦で打ち合える打撃力がなければ難しい。打撃戦を避けたテイクダウンと、打撃戦に応じることができるテイクダウンは別モノだ。北米のMMAに出向けば、アミルやガルシアのようにタフな打ち合いができるファイターは珍しくない。加えてテイクダウン防御力が高く、寝技に対処できる選手でないとトップ10やトップ5になることは困難だ。

国内での試合で打撃で勝てるからといって、それがUFCに通じるという楽観的な考えだと、UFCは勝てない。組み技に穴があっては通じない。それは韓国だけでなく、日本のMMA界にも完全に当てはまる現実だ。

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