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【review】51歳のバンナのKO負け!やはり起用しない方がよかったのか?

10月5日(土)、大阪・エディオンアリーナ大阪で開催された「K-1 WORLD GP 2024」で無差別級WGPアジア予選が4試合組まれ、旧K-1時代に無冠の帝王として暴れた“ハイパー・バトルサイボーグ”ジェロム・レ・バンナが参戦した。

14年ぶりのK-1参戦となるバンナは、すでに51歳。参戦が発表された時点で、“無理”“無謀”という声が数多く挙がった。当サイトでも試合前に“老化による大きな影響は動体視力、反応の低下が著しい”と指摘したが、高齢のK-1WGP挑戦が無謀だったのは間違いない。

それでも勝負論が成り立つと見ていたのは、バンナがコンスタントに試合をしていたこと(MMAにも挑戦)、今年6月にキックルールでKO勝ちをしていたことが背景にある。引退している選手を無理やりリングに引っ張り上げたわけではなく、辛うじて現役という首の皮がつながっていたことが唯一の望みではあった。

さらに対戦相手のK-Jeeは33歳で3年間勝ち星がなく、4連敗中だったことから、大きな実力差はないと思われていた。だが、結果はバンナがK-Jeeのパンチ連打からの右ハイキックにより、1RKO負けに終わった。

失神して担架が運ばれるというショッキングな結末に。かつてのあの強かったバンナの片りんは、少しも見ることができないまま終焉を迎えることとなった。K-Jeeのここ数年見たことがなかった神がかり的な強さ、バンナが何もできずにマットへ沈む切ない姿。この光と影のコントラストは、K-1を長く見てきたファンにとっても衝撃とも言えた。

結果が出た後、ネット上ではバンナを起用したことに対して“それ見たことか!”と批判の声が上がる。だが“レジェンドを見世物にした”という論調も目にすると、それは違うかなと思う。

格闘技とは、そもそも残酷な結果が出るものだし、とくに旧K-1はそうした場でもあった。バンナが引退していたとなれば別だが、まだ試合をしていた以上、挑戦したことを称えるべきだろう。バンナは試合前、「この挑戦は無謀だという声がある」との質問に対して、「明日、もし俺が負けたのであれば、それは相手に才能があったということだ。俺が試合をすることで、何かを伝えられればいい」と語っていた。

おそらくバンナは、負ける可能性が高いと思っていた上で、かつてのK-1をリングで体現したかったのではないだろうか。ヘビー級の迫力、K-1の醍醐味、選手の覚悟、自らの肉体を使って伝えたかったに違いない。

バンナは今回、急なオファーで準備期間が短かったという。試合の1週間前に来日し、スポンサーのイベントに協力し、同時代をともに戦った故アンディ・フグさんの墓参りもした。

ひょっとしたら彼は、選手としての死に場所を探していたのかもしれない。巡り巡ってK-1がリバースし、ギリギリ死に場所に辿り着いたのではないだろうか。そうじゃないとビジネスが成功している彼が、再びK-1のリングに戻ってくる理由がなかった。

試合後、バンナは記者の前に現れて「引退」を宣言した。その顔は、じつにスッキリしており、優しい表情になっていた。みんなに感謝の言葉を伝えて席を立つと、記者会見場が拍手に包まれた。感無量のバンナは、通訳、セコンド、そしてその場にいた記者、スタッフ全員と握手をして丁寧に感謝の言葉を伝えた。K-1デビュー戦時代から取材してきたが、彼のこんな姿は初めてだ。

かなり怒りっぽい面倒な性格だが、人間味は人一倍あり“K-1番長”というニックネームは、そこからついたバンナ。一人ずつ握手する姿は、本当にこれで一つの時代が終わったことを感じる象徴的なシーンと言えた。

この場面に直面し、最後の挑戦の機会があって良かったのでは?と感じたのは、記者だけだろうか。バンナをサポートしてきたスタッフは、「負けはショックでしたけど、最後にK-1で試合ができて良かったと思います」と涙ながらに語った。

バンナは、アンディ・フグやライバルだった故マイク・ベルナルドの名前を出すと、天を見上げて微笑んだ。

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