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【preview】メインに3選手、プレリミに1人。大挙出場の韓国人選手に注目

7月20日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXでUFC on ESPN60「Lemos vs Jandiroba」が開催される。メインは前週のUFC ESPN on 59のローズ・ナマジュナス×トレイシー・コーテズのフライ級に続き、アマンダ・レモス×ヴィルナ・ジャンジローバと女子バンタム級戦が組まれた。そんな今大会にはパク・ジュンヨン(写真左、中央はKTTハ・ドンシン代表、右はFCライトヘビー級ファイターのチョン・ダウン)、チェ・スンウ、チェ・ドゥホ、イ・ジョンヨンと4人の韓国人ファイターが出場している。

現在、彼らの他にライトヘビー級のチョン・ダウン、バンタム級のカン・ギョンホ&イ・チャンホ、フライ級のパク・ヒョンソンと4人の韓国人選手がUFCと契約下にある。つまり、8人中4人が一つの大会で戦うわけで、しかも3選手はメインカード出場とさながらコリアン・インベーションと化した大会となっている。

日本のRIZINに相当する巨大なドメスティック・イベントが存在しない韓国にあって、UFCは、強さを追求する──当地のMMAファイターにとって唯一無二の最高到達点だ。そして韓国におけるUFCは、他のMMAイベントと圧倒する知名度を誇っている。UFCで得たバリューをもとにキム・ドンヒョンはMMA引退後にTVタレントとして、格闘技と関係のないバラエティに引っ張りだことなっている。

昨年8月にシンガポールで、マックス・ホロウェイとの激闘をもって現役生活を退いたコリアンゾンビことジョン・チャンソンもTVワールドに進出しつつ、先月29日にはソウルでZFN(ゾンビ・ファイトナイト)を主催。プロ部門のゾンビ・ファイトネーション、アマ部門のZ-Royalと後進の育成にも乗り出している。

コリアンゾンビ率いるZFNを始め、老舗Road FC、新興Black Combatと国内大会では、選手の待遇が向上しており、今やウォンに対しても円安傾向にありRIZIN以外の日本のプロモーションは、質をともなった韓国勢の招聘は以前のようにはいかなくなるかもしれない。

国内のMMAが実りの時を迎えそうな予兆があるなか、オクタゴンでK-MMAを代表するファイターが勢ぞろいする今大会に、大きな期待が寄せられていることは間違いない。実はこれだけの陣容を誇りながら、同国におけるUFCの放映権やプロモート兼を握ったコングロマリット=CJグループは昨年2月にコリアンゾンビの出場拒否を受け、ソウル大会開催を断念。UFCの韓国大会開催に消極的になっているという現状がある。

それゆえにベガスにこれだけの韓国人選手が揃うという現象も起きているのだろうが、いわば国内に絶対的な市場という背景のないK-MMAファイターにとって、UFCは安住の地といえないのも確かだ。それは6選手が契約をしている日本勢も同じで、結果とパフォーマンス──つまりプロとしての実力と魅力で勝負し続ける必要がある。この点において、今や12人のファイターがUFCで戦う中国人ファイターと韓日のファイターの立場は明確に違う。

逆をいえば勝てば官軍、4人ものファイターが一夜に出場するのだから、今大会はUFC韓国大会の再開に向けて追い風を得る貴重の機会といえるだろう。

コメイン=ミドル級に出場するパク・ジュンヨンはミドル級というクラスにあって、オクタゴンで7勝3敗という結果を残す、名門KTT所属のファイターだ。昨年12月にアンドレ・ムニスにスプリット判定負けを喫したものの、それ以前は4連勝を成し遂げており──この階級で彼の快進撃は漢江の奇跡といっても過言でない。

パク・ジュンヨンは今回出場する3人のフェザー級勢と違い、ストライカーではない。打撃戦を展開しつつ、組んでテイクダウンからコントロールして削る。そして最後はバックを制してRNCというのが彼の鉄板、勝利の方程式だ。その一方で、ストライカーを相手にしっかりと固い防御の奥で目を光らせ、組みつくタイミングを計っている。打撃に退くことなく、いざとなった時には覚悟を決めて打ち合うスタイルはまさにアイアン・タートルの異名通りだ。決して引かない姿勢と、ファイター然としていないとぼけたキャラで韓国のファンを引き付けているパク・ジュンヨン。ブラッド・タヴァレスというパンチャーを相手に、この忍耐&爆発ファイトを展開し、再浮上を狙いたいところだ。

スティーブ・ガルシアと戦うチェ・スンウは連敗、3連勝、3連敗という波のあるUFCファイター生活を送っているが、元は韓国のキックボクシング王者で、正統派の打撃の使い手といえる。他方、組みつかせないスタイルを信条としていたため、本来の良さを失いスコアリングファイトに徹した時期もあった。前戦ではカーフを効かせ、投げまで使う積極的なファイトで一皮がむけたチェ・スンウにが、その勢いを持続させることができるのか、非常に大切なスティーブ・ガルシア戦となる。

日本でもおなじみ──といっても、活躍していたのはもう10年以上も昔になる──コリアンスーパーボーイこと、チェ・ドゥホは1年5カ月振りの実戦復帰となる。兵役と負傷でUFC在籍10年ながら試合数は僅かに7試合で、レコードも3勝3敗1分と決して秀でているわけではない。しかし、2016年7月のカブ・スワンソン戦が殿堂入りを果たすなど、記録より記憶に残るファイターとして既に金字塔を打ち立てている。とはいっても、まだ33歳。今後チェ・ドゥホがインパクトを残しつつ結果を出してタイトル戦線で戦うことができるか。試金石となるビル・アレジオ戦だ。

唯一、プレリミ出場となったイ・ジョンヨンは、これらのファイターのなかで唯一Road FCという国内トップ団体でベルトを巻いた過去を持つ。UFCの対抗勢力という位置づけを取ったRoad FCのなかで、国内の有望&トップ選手としのぎを削り、一定のファンベースを持ちながらRoad to UFC2022に転じて優勝。今大会でオクタゴン2戦目となるイ・ジョンヨンもチェ・ドゥホと同様にファンを惹きつける戦いができるパフォーマーだ。

同時に負けない戦いも体に沁みついており、決して無謀な打ち合いをするわけでもないのに殴り合い上等という戦い方もできる。踏み込んでも、下がって誘い込んでも相手を倒し切るカウンターの持ち主であるイ・ジョンヨン。後ろが使える素質と感性の持ち主は、今後のK-MMAを引っ張る存在になれるのか。ハイダー・アミル戦、要注目だ。

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