10月5日（土）、大阪・エディオンアリーナ大阪で開催の「K-1 WORLD GP 2024」において、無差別級WGPアジア予選が4試合組まれた。

驚いたのは、旧K-1時代に無冠の帝王として暴れた“ハイパー・バトルサイボーグ”ジェロム・レ・バンナの参戦だ。14年ぶりにK-1無差別級のWGPが復活したとはいえ、まさかのレジェンド参戦に声を失うほどの衝撃を受けた。

バンナは現在51歳で、まだ引退していないとはいえ、トップ戦線で戦うだけの実力を保っているとは思えない。これまで何人ものベテラン選手を見てきたが、年齢とともに落ちるのはスタミナはもちろんだが、動体視力とそれに伴う反応だ。

高齢のベテランが若い選手と対戦した場合、その攻撃のスピードについていけず、倒されるシーンに何度も遭遇した。逆に言えば若い選手はハンドスピードで勝負すれば、かなりの勝率で倒せるということになる。

ただ、今回、バンナと対戦する日本のK-Jee（けいじ）は33歳。パワーで押し切るタイプのため、愛称的に2人は噛み合うはずだ。勝負論は十分に成り立つと見ている。しかもバンナは、今回雑誌の取材を3回もドタキャンする“番長”ぶりをいたるところで発揮し、その横暴さを含めて健在と言わざるを得ない存在感を見せている。

心配なのは、その先だ。仮にK-Jeeを破ってWGP決勝ラウンドへ進んだとしても、12月にワンデイトーナメントが待っている。一日に3試合勝たないと優勝できない過酷な試練は、51歳のバンナにとって地獄と言ってもいいだろう。

ここで優勝して「無冠の帝王」の称号を返上することになれば、ドラマティックなストーリーとなるが、現実はそんなに甘くはない。とくに今回のWGPは、9月29日にマハムード・サッタリから完封勝利し、K-1での無敗記録を6に伸ばした中国のリュウ・ツァーがディフェンディング王者として君臨する。

予選を勝ち進みWGP決勝トーナメントでリュウと対戦することになれば、バンナは肉体を破壊される危険性もある。サッタリ戦後、リュウにバンナのK-1復活について聞くと、「そのレジェンドはもちろん知っていますが、いま何歳ですか？」と逆質問を受けた。51歳と伝えるとリュウは「私の父親は52歳ですよ」と不敵に笑い飛ばしている。

分かっていることではあるが、バンナが最後にK-1で試合をしたのが2010年だ。14年の月日が流れれば、旧K-1で活躍していたファイターたちは引退していてもおかしくない状況だ。

今回、旧K-1の後期に試合をしてきたエロール・ジマーマンも参戦して山口翔大と対戦するが、ジマーマンは「自分が最後の世代だ」と語っている。38歳のジマーマンが、旧K-1時代の現役ギリギリといってもいいだろう。

それに加えて、バンナのことを知っているファンがどこまでいるのかも疑問だ。実際にK-1の中継でゲスト解説をしているタレントのゆうちゃみが、「バンナって誰?」と話していたくらいなので、10代20代の若い世代がバンナのことを知らないのは仕方がないところ。

集客のためにバンナを利用したとなれば、どこまで効果があるのかは疑問だ。なぜバンナを今になって引っ張り出す必要があったのか、その狙いが何なのか知りたいところだ。

分かっているのは、バンナと対戦するK-Jeeをはじめ、山口翔大、谷川聖哉は絶対に負けてはいけないということ。旧K-1で活躍していた選手に敗北したら、無差別級の未来はない。いや日本の無差別級の未来はない。

来年以降は無差別級を海外でやるという噂もあるため、彼らがここで活躍しないと、日本開催の無差別級WGPが今回で最後という事態にもなりかねない。強い日本人の台頭に期待したい！