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【review】久保優太が過去最強の相手に見せた久保流MMAの理想形

7月28日(日)さいたまスーパーアリーナで開催された超RIZIN.3。観衆48117人を集めたビッグイベントでは平本蓮が朝倉未来をKOするなど劇的な決着の試合が続き、元K-1王者の久保優太も斎藤裕を三日月蹴りでKOする衝撃を残した。

2021年9月にK-1からRIZINに戦いの場を移し、MMA転向を果たした久保。同年大晦日のシバター戦が思わぬ形で話題を生んだが、その後は木下カラテ戦を含めて3連勝。特に今年3月のRIZIN LANDMARK 9では、元修斗環太平洋フェザー級王者の高橋遼伍からも判定勝利をおさめ、MMAファイターとしての進化を見せつけた。

そして今大会では元修斗世界フェザー級王者で、元RIZINフェザー級王者・斎藤と対戦。これまで戦ってきた相手の中で最もMMAファイターとして実績を残し、完成度が高い斎藤との対戦は、久保がRIZINでベルトを狙える位置にいる選手かどうかが試される一戦だった。

はたして試合は序盤から久保のペースで試合が進む。サウスポーの久保はオーソドックスの斎藤に対し、前手(久保の右手)で頻繁に斎藤の前手(斎藤の左手)を触って距離を取り、斎藤に蹴り足を取られないように高めの左ミドルキックを飛ばす。そのうえで久保は斎藤のステップインに合わせてバックステップ、そして右手を伸ばして自分の間合いを保ち続ける。

そして1R中盤、この試合の流れを決定づける場面が訪れる。斎藤が久保の右足にシングルレッグに入る形で久保をコーナーまで押し込んだのだ。久保にとってここでテイクダウンを切れるかどうかが勝負の局面。久保は右手で斎藤の左手を小手に巻き、左手で斎藤の右の二頭筋部分を抑えてクラッチを組ませない。斎藤がダブルレッグに入ろうとしても、左腕を差し上げて五分五分の状態に戻し、自分の頭を斎藤の顔の下におっつけて、ブレイクを待った。

この一連の攻防で斎藤にテイクダウンを許さなかった久保。続くスタンドの攻防で久保の左のテンカオ(ヒザ蹴り)と斎藤の右ストレートが交錯するが、態勢を立て直した久保がすぐにカウンターの右フックを当てて、斎藤がバランスを崩す。ここから両者が立ち上がってスタンドの展開が続き、久保が組みつこうとする斎藤を突き放し、序盤とは違う低めの左ミドルを蹴ってダメージを与えにかかった。

2Rに入ると久保の打撃はよりダメージ重視のモードに変わり、ボディを効かせる左ミドルに切り替え、斎藤のテイクダウンの切り際にもボディへのヒザ蹴りを突き刺す。斎藤も何とか距離を詰めようとするが、そこにはヒザをしっかりと畳んだヒザ蹴り気味の左ミドルを蹴り、ここからは左ミドル、右ジャブのカウンター、三日月蹴りと手数を増やし、斎藤のテイクダウンにも対処。最後はコーナーを背負った斎藤に左の三日月蹴りを突き刺して、見事なTKO勝利を収めた。

序盤のスタンドの攻防で距離を支配し、組まれてからのテイクダウンも阻止。打撃で戦わざるをえなくなった相手を着実に削って最後はボディへの攻撃で仕留める。久保は最大の難敵と思われた斎藤戦を自身の理想のMMAの形とも言える戦い方で終わらせたと言える。キック時代から久保と二人三脚で過ごし、MMAでもセコンドを務める弟の久保賢司は斎藤戦をこう振り返る。

「今回の試合ではテイクダウンされて寝技に持ち込まれる展開を警戒していたのですが、久保優太のディフェンス力をセコンド陣は知っているので、斎藤選手のテイクダウンは“切れる”、テイクダウンされても“立てる”ので、一切の不安はなかったです。左ミドルに関しては、絶対にキャッチすることが出来ない秘密の蹴り方があって、それを使っていました。1Rが終わった時点で、セコンドしては『完璧!』と一言でしたね。自由に戦えば確実に勝てると思いました。腹で倒したのは試合の流れです。最後の三日月蹴りは必殺技の一つに過ぎなく、複数あるKOパターンの1つがハマったという感じですね」

この勝利で久保は間違いなくRIZINフェザー級のトップ戦線に食い込んだ。ここからベルトを目指すうえで、テイクダウンや寝技に長けた相手、強豪外国人との対戦は避けて通れないだろう。試合後のリング上では「僕って立ち技だけじゃなくMMAも天才ですね」と恥ずかしそうに語っていた久保だが、天才・久保がさらなる強敵たちを攻略していく姿を見たいと思うファンは多いはずだ。

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