【後編】PROGRESS 生田誠 インタビュー

――3月11日に行われたONE世界フェザー級チャンピオンシップ、タン・リー×ゲイリー・トノンの試合内容は衝撃的でした。王者リーがトノンの足関節を防ぎつつパウンドを当て、KO勝ちするという……。

 

「興味深いですよね。日本のMMAでも、そういったパターンの試合はあると思いますし。今のブラジリアン柔術をやっていると、そこに大きな穴があるように感じていて……。僕は柔術が大好きすぎて、この考えが昔から変わらないんです。柔術だけで一つの総合格闘技として確立しているんじゃないかって。

 

今のMMAは、いろんな競技のミックスですよね。レスリングの技術、打撃の技術などが全部入って、それがどう回転するのか。でも昔のグレイシー柔術みたいに――ヒクソンやホイスのように、柔術の技術だけで勝つことはでなきないのかなって考えています。その技術を身につけるためにも、コンバット柔術の経験が役に立つんじゃないかなと思っているんですよ」

 

――生田選手にとってはMMAをやる、コンバット柔術でいえば掌底で相手をKOしたいということではなく、掌底があるなかで自分の柔術で相手を制することができるか、ということなのですね。

 

「そうです。あと、エディ・ブラボーも言っていたんですよね。『なぜコンバット柔術をやるのか? MMAが面白くないからだ』って。MMAだと一方が寝技に付き合わずに試合が終わってしまうこともあるじゃないですか。そうではなくて、戦いの中で柔術を生かしつつ、MMAを柔術で勝つ方法を見直したい。

 

IREではMMAのパウンダーと対戦して、相手は寝技に一切付き合いませんでした。それでもコンバット柔術のルールの中では――たとえば僕が引き込むと、相手は上から攻めないといけないですよね。僕が立たされるのではなく。それがMMAではなく、昔のバーリトゥードみたいで。今の僕がやりたいのは、このコンバット柔術なのかなと思っています。

 

今の格闘技界では、みんな技術を増やそうとばかりしますよね。そうではなく、今の僕がやりたいのは、22年やってきた柔術の技術の中で、使えないものをそぎ落とすことなんです。結局、その末に柔術でも戦えるし、グラップリングでも戦えるし、打撃有りの試合でも戦えるような柔術の根幹が見えてくるんじゃないかな、と思っています。周りの人がやっているのとは、全く逆のことなんですけど(苦笑)」

 

――ちなみに、グレイシー柔術への憧れの中で、ケージの中で戦ってみたいという夢もあったのでしょうか。

 

「ありました(笑)。IREでケージの中に入った時、『おぉ、遂にケージの中へ!』と思っちゃいました。オジサンが夢を追いかけて、ケージにたどり着いたという。僕たちの世代で、グレイシーに憧れても柔術ではなく、いきなりMMAを始めた人たちもいるじゃないですか。

 

昔よくMMAのジムで見られた光景なんですけど、MMAの人と柔術の人たちが相容れず、水と油みたいな……。MMAの人はMMAだけ、柔術の人は柔術だけ。そんな区分けができてしまっていて。それがずっと不思議でした。

 

でも今のボンサイ柔術やブラジリアンの柔術アカデミーを見ていると、そのあたりはよく考えられていて。柔術をやっている人がMMAをやりたいとなった時、柔術で白帯や青帯の人は止められるらしいんですよ。最低でも紫帯を取得しないとMMAはやらせてもらえないという。

 

そういう人たちにとってのMMAは何かといえば、柔術の強さを証明するためにあえて打撃のある相手のルールで戦うんだと。そこで戦ううえで、中途半端な技術の柔術家を出すわけにはいかない。柔術で結果を出している選手が、代表として出ていく。そこで結果を出しながら、打撃でダメージを負ってしまった人は、また柔術をやればいいという考えなんですよ」

 

――まさにグレイシー柔術であり、バーリトゥードですね。

 

「そこで僕は、柔術とMMAの現実をすり合わせないといけないと思うんですよ。50/50やベリンボロのようなモダン柔術の技術がある。でもMMAファイターの多くは、それは柔術だから――とMMA用のグラップリング練習が中心になるわけですよね。そうしてMMAと柔術が枝分かれしたところもあるかもしれません。僕みたいな柔術家がMMAに出ても勝てるわけないと思われるでしょうし。

 

でも、やってみないと分からないですから。まだ分かっていないから、コンバット柔術をやるんです。プログレスのフォークスタイルは、MMAで強くなるためのルールだと言われているじゃないですか。それと同じように、僕にとってのコンバット柔術は――僕が柔術で強くなるために挑戦するルールなんですよ。コンバット柔術で戦い、自分の柔術のために何かを得たいですね」

 

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