
――閃きとリスクのお話でいえば、閃きに頼りすぎてしまうリスクもあると思います。閃きというか才能に頼っていると最初は地力で勝てたとしても、上位陣と当たれば負けるケースは過去に多くありました。
「そこを絶対的な練習量でカバーしているので。俺は誰よりもスパーの本数や練習時間はやっています。ずっとジムにいるから、その下地があったうえでの閃きが自分の武器なんですよね」
――では、練習中にも閃きは訪れるのですか。
「めちゃくちゃ閃きが来ますよ。俺って天才だなって思いますよ。なんて言っていると、長南さんに怒られますけどね。お前は天才じゃないよって。だから『いやぁ、分かってねえなぁ』と思っています(笑)」
――アハハハ、いずれにしても試合は結果が全てです。そうした練習と閃きが現在の2連勝とベルト獲得に繋がり、自分の天才ぶりを証明してきたということですか。
「まだまだですよ。練習の閃きは、こんなもんじゃないので。まだ5パーセントぐらいしか出せていないんじゃないですか。95パーセントは、まだ取っていますから」
――それは残り95パーセントが楽しみです。対戦する選手も、試合中に相手の閃きは読み切れないかもしれません。
「そうですよね。俺も自分が何をするか分かっていないので」
――確かに(笑)。
「試合前にプランは立てるんですよ。A、B、Cと3通りぐらい。AプランがダメならB、BがダメならC、それでCがダメだったらAに戻って――その間に閃きが来るんです。A、B、Cのプランは読まれても、その閃きは相手も分からない。それが自分の強みだと思っています」
――なるほど。では次の試合についてお聞きします。まずこれだけ修斗バンタム級は総当たり戦の様相を呈しているなか、石井選手と藤井選手は対戦経験がなかったのですね。
「そうなんですよ。修斗で試合したことがないのは、もう藤井ぐらいですね。打たれ強くてスタミナがあって、最終ラウンドまでガンガン前に出続ける。頑張るマンっていう感じですよね。自分にとっては得意なタイプです。相手が前に出てきてくれると、自分もどんどん前に出てスイングしますから、スタイル的には噛み合います。相手が待ちのタイプだと、自分は出遅れてしまうところがあって」
――ガンガン前に出て来るタイプとは、最近の試合でいえば小野島選手と石橋選手でしょう。反対に待ちのタイプであり、それこそ同じように閃きと身体能力が高い安藤選手に敗れた試合を経て、ご自身の中では何か変わったのでしょうか。今後も安藤選手のようなタイプと対戦することもあるでしょう。もちろん安藤選手との再戦も含めて。
「はい。もともと前回持っていったプランで、安藤さんには勝てると思っています。あとは、そのプランの精度を高めていかないといけない。安藤さんが乗り気なら、もう1回やりたいです。再戦がなければ――藤井を倒しちゃったら、修斗にはもう対戦する相手がいないので、いったん外を目指したいという気持ちはありますね。もちろん安藤さんを倒してから外を目指すのが、一番筋は通っていると思いますけど、安藤さんにとっても自分との再戦なんてメリットがないかもしれないですし。だったら、お互いに違う道に進むでしょう」
――外を目指す……このインタビューは、チームメイトである若松佑弥選手がONEで戦う直前に行っています。石井選手は以前、ONEを目指しているという言葉もありました。若松選手の試合に触発されますか。
「ONEが契約してくれるなら、やりたいです。でも自分のスタイル的には、北米ユニファイドルールのほうが合っていると思うので。自分を生かせる道は北米なのかな、ONEのルールは合わないかな――って」
――北米ですか。TRIBEでいえば佐藤天選手はUFC、工藤諒司選手がPFLに出場しています。知り合いの試合は見ているとのことですが、それらの試合を見て、今の自分と北米の差についてはどう感じていますか。
「どうなんですかね、それが分からないから挑戦したいんですよね。どれぐらい俺が通用するんだろうかって思いますよ。自分の長所がハマれば勝てるし、まだまだだなって思わされるのかもしれない。でも、そういう強いヤツらを底辺から食っていきたいです」
――全ては次の藤井戦の結果次第ですね。藤井戦は、どのような試合をしたいですか。
「相手の心が折れるぐらいボコボコにします。アイツはKO負けも一本負けもないんですよね。そんな相手を諦めさせて、かつタップを奪いたい。アイツのようなタイプからタップを奪ったら面白いですよね」
――一方で、藤井選手に関して注意している部分などはありますか。
「注意しているところ……一つもないですね。全部、俺のほうが上です。相手は得意なテイクダウンを狙ってくるとは思いますけど、そこを全部潰す。得意なところ潰して、アイツが『これはもう無理だ……』と落ちていく試合を見せますよ」